■ はじめに|不正は突然起きない
決算発表の延期、数値の修正、第三者委員会の設置。 こうしたニュースは、定期的に繰り返されている。
だが、不正会計はある日突然始まるものではない。 その前に、必ず「小さな歪み」が積み重なっている。
■ 近年の不正に共通する特徴
① 派手な操作ではなく、静かな先送り
近年目立つのは、売上を架空に作るような分かりやすい不正ではない。
本来計上すべき費用を後ろにずらす。 本来認識すべき損失を「様子見」にする。
これは粉飾というより、 「判断の先送りが積み重なった結果」に近い。
② 長期案件・見積り依存の事業
不正が起きやすいのは、 成果がすぐに確定しない事業だ。
将来の見通しが前提になるほど、 会計処理は「事実」ではなく「判断」になる。 その判断が歪む余地は常に存在する。
③ 倒産回避より「評価の維持」
多くのケースで、会社は直ちに倒れる状況ではない。
それでも数字が歪むのは、 評価・信用・成長ストーリーを守りたい という圧力が働くからだ。
■ なぜ内部で止められないのか
不正が明るみに出た後、 「誰も気づかなかったのか」と問われる。
実際には、多くの場合で気づいている。 それでも止まらない。
- 止める権限がない
- 止めると責任を負う
- 止めた後の代替案がない
不正は、個人の倫理ではなく、 組織の設計によって温存される。
■ 不正は「兆候」として現れる
数字が歪み始める前に、言葉が歪む。
- 説明が抽象的になる
- 根拠が「経験」「感覚」になる
- KPIより目標数字だけが語られる
- 経理が調整役になる
これらはすべて、 組織が健全さを失い始めているサインだ。
■ 結論|問題は数字ではない
不正会計は、ルールを守らなかった結果として語られる。 だが本質は、もっと手前にある。
間違いを早く認められない構造。 正直に出すと損をする評価制度。
数字が歪んだのではない。 組織が、歪んだ状態で数字を見ていたのだ。
問うべきは、こうだ。
この組織は、失敗したときに、 正直な数字を出しても壊れない設計だったか。